【FTA2023】カナダにおけるジョージ・フロイドを知っているか。
芸術作品に触れたとき、その作品が持つ文化的社会的背景を踏まえた美的経験と踏まえない美的経験があると思う。昨晩観劇したカナダ先住民のアーティストの作品をテーマにしたディスカッションはおおいに盛り上がった。それぞれが、自分の文脈に合わせて、感想を共有したあと、ぜひカナダ圏のアーティストに感じたことを詳しく聞きたい、と提案があった。カナダは広いので、住む地域によって、彼らが受けてきた植民地の歴史教育も様々だそうだが、それぞれが捕捉しあいながら、カナダにおける先住民の文化的社会的文脈を話してくれた。
2020年に、先住民族アティカメクのジョイス・エチャクワンさんが病院で亡くなった。彼女は、亡くなる直前に、facebookに動画を投稿していて、そこには、看護師たちから侮辱され続ける様子が映っていた。改めて、先住民への差別は終わってないということを、カナダ全体が思い知る事件となったそう。
HUFFPOSTの記事:「お前は最高に頭が悪い」先住民族の女性、病院で人種差別を受けた後に死亡。Facebookに動画を投稿していた

インターネットで出てくる情報から私もだいぶ勉強していたが、やはり、生身の人間から聞く言葉の威力は強く、中でも、フランス語圏と英語圏での認識の違いにっは驚かされた。フランス語圏のケベックでは、悪いのはイギリス人で、フランス人は先住民に優しかったと、学校で習ったり、バンクーバーなどの英語圏における北米インディアン迫害よりはまし、という認識がかなりあったそう。実際、学校でカナダの先住民迫害の歴史を教えるようになったのも、カナダ政府が2008年同化教育に対し正式に謝罪した以降のことらしい。
今回見た作品は、英語圏の先住民による作品だったのだが、非常に秀逸な構造で、すでに公演情報から作品は始まっているので、作品の内容は口外してはいけないというアーティストとの上演後の約束のため、記述できないのが残念。ただ、いつか見る機会があれば、この作品のために、海を超える価値はあると思う。私は、直接的な当事者ではないが、観客のリアクションからもたくんさんのことを感じる仕組みになっている。そして私は、カナダから8000km以上離れたアイヌ民族のことを考えていた。
William Shakespeare’s As You Like It, A Radical Retelling by Cliff Cardinal
https://fta.ca/en/event/as-you-like-it/
現在でも、先住民を、アルコール中毒、ドラック、税金を払わなくていい(法的に)などの理由から、差別している人がたくさんいる。中等教育に関しても、先住民の子供たちは、無料で学校にいくことができるが、親たちが、以前「寄宿学校」にいれられ同化教育をさせられ、自分の家族と会話ができなくなってしまった恐怖から、自分の子供たちを学校に入れることを嫌がる傾向にあるそう。となると、教育水準が低いまま成長してしまうので、いい仕事につけず、ホームレスになってしまうという構造があるそう。同世代のカナダ圏のアーティストから、すべて彼らの言葉で聞いた。
話し足りないまま、時間切れになってしまい、後ろ髪をひかれながらも夜の観劇にいこうとすると、カナダ人のアーティストが走ってきて、大事なことをいうのを忘れたという。先住民女性に対して、つい最近(2017年)まで、出産の際に、強制的に子供を産めない体にする手術が行われていたとのこと。
これだけのことを学べる観劇体験はなかなかない。