先週は、連日の公演に加えて、職業案内所での面接というビックなイベントがあった。
フランスにおいて、俳優として食べていけている人たちに不可欠なのが「Intermittent du spectacle」というシステムである。
一言で説明すれば、技術スタッフを含む、上演芸術に携わる人たちのための失業保険制度、というところでしょうか。
intermittentとは、フランス語で「断続的」の意味。
つまり、ショービジネスにおいて、不定期に契約をとって働いている人たちを支援するシステム。
具体的には、以下のような人たちが、給付の対象となる。
俳優、ダンサー、振付家、演出家など、舞台芸術に携わるアーティスト。
サーカス、大道芸人。
そして、舞台・映画などで音響・照明などを担当する技術スタッフ。
最近知ったのは、映画への出演契約も含まれるということ。
なんとこのシステム、体制の変化はあるものの1936年から続いているらしい。
2017年現在では、12ヶ月の間に、507時間以上の契約があることが、「Intermittent du spectacle」申請の条件となっている。
私の場合、昨年6月のモンペリエでの公演の契約の時から、時間数を貯め始めたので、
昨年末には、すでに申請の条件は整っていたのだが、そこで問題になったのが、ビザだった。
Intermittent du spectacleは、就労目的をサポートするシステムなので、学生ビザでは申請することができない。
そこで、まずは、学生ビザから、アーティストビザ(パスポート・タレント)への変更が必要となった。
ビザの更新の際、ビザの種類を変えるのには、時間がかかる上に、アーティストビザに関しては、書類審査のようなもので、申請が通らないことも多々。
私の場合は、昨年7月に申請をして、なんと、待つこと9ヶ月!
4月の頭にようやく、ビザが発行された。
早速、ビザを片手に、職業案内所(Pôle emploie)のサイトへ。
まず、衝撃だったのが、希望職種の欄に「俳優」という欄が存在するということ。
そこから、その人の「俳優」という職探しのために、適性と能力を測る。
職業に対する希望を答える欄も含めると、
質問の数は50個近くに及ぶ。
中には、「台詞を覚えることができる」「声の色を変えることができる」なんていう項目が存在する。
これらの質問に答えた後に、507時間以上の契約を、公演ごとに入力していく。
フランス人の俳優に助けてもらいながら、かかった時間およそ90分。
めでたく、パリ市内の自分の住んでいる地区にある職安の面接の予約を取り付ける。
不景気のヨーロッパで職安ほど、混んでいる場所はないと言われるが、
案の定、予約が取れたのは約1ヶ月後。
現在の現場で、15人俳優がいるのだが、まだintermittentを取得できていないのは、私だけ。
ということで、職安に面接に行くうえでの、アドバイスがあるかと彼らにきいたところ、あまり高級な服は避けるようにと言われる。
一方、スタッフには、一応「俳優」として職安に行くんだから、あんまりみすぼらしい格好は良くないと言われる。
悩んだ末、中間をとって、やたらスポーティーな格好で行くことに。
初めての職安は、明るくて、綺麗で、予想外に感じがいい。
予約を取らずに、並んでいる人の長蛇の列には、やはり移民系の人が多い。
私は、個室に案内され、職安に登録することで、これからは、失業者として認定されることを説明される。
フランスにおける失業者の心得。
– 1ヶ月以上、バカンスに出る場合、もしくはフランスを離れる場合は申告する。
– 1ヶ月に一度は必ず、仕事の時間数などを申告する。
– 職安からの呼び出しは最優先する。
– ズルはしない。
以上のことが厳守しろと念をおされる。
ちなみに、フランスには嬉しい失業者割引というものがあって、
学生割引と同じ値段で、美術館、映画、劇場に出入りできる。
つまり、学生が終わった途端に、失業者に認定された私は、ずっと割引料金である。
この日、めでたく職安で失業者に認定された私の書類は、
パリ15区にあるintermittent専用の職安に搬送され、次は、そこからのお呼びを待つことになるらしい。
アーティスト生活補助金を頂くまでの道は、まだまだ長そうだ。
公演は明日から、3週目に突入。
精神的にも、肉体的にも未知の領域。