おなら事件と24時間強制腹式呼吸

日を追うごとに、増える痣と、枯れる声。

いかに、俳優としての基礎ができていないかということを思い知らされる日々を送っています。
映画ではよく、経験の浅い俳優の方が、演技に癖がなくていいと言われたりするが、
演劇の場合、演技うんぬんよりも、ベスト・アクトを「持続」するための、
根っこを担う、最低限のテクニックが必要になる。
そこで、最大の敵としてたちはだかるのがストレス。
今回、私が極度に恵まれているが故に、極度のプレッシャーの中でのクリエーションで、
患ってしまった実に面白い病気がある。
実際は、全く面白くもなく日々帰宅しては、
隠れて泣きながら戦っていたのだが、
おそらく誰にも心配してもらえない病気だと思う。
人間はストレスを抱えると、
空気を吸う場所がどんどん上に上がってくる。
胸式呼吸、ひどい場合になると、無意識に、肩式呼吸という場合もある。
声を職業として使う人が、ストレスを抱えた場合に、
胸式呼吸をしてしまうと、一回に吸える量が腹式呼吸に比べて限りなく少ないので、
何回も空気を吸うことになる。
かつ、声を出している状況が長く続くと、
口で呼吸をすることになるので、簡単にいうと余計な空気を食べ過ぎてしまう。
これが、空気嚥下症という病気。
体内に、必要以上の空気が溜まってしまうので、
お腹がなったり、なんと、おならの大量発生を招く。
人間は、通常10回から20回のおならを1日にしているのだが、
それ以上におならが出る場合は、なんらかの原因を疑うべき。
私は、ひどい時なんて、2分に1回の割合でおならをしていた。
さらに拍車をかけて、普段、肉をほとんど摂取していなかった私が、
共同生活で、肉を食べ始めたので、おならが臭いという大惨事。
おならは演技に直接は影響しないにしても、
呼吸が胸式になったままで、600人規模の劇場で声を出したら、
声を枯らすのは、想像にたやすい。
いままで、ここまで大きい劇場で、公演を行った経験がないし、
フランスには、日本語にない、喉をかすって出す発音が存在するので、
日本的な発声練習をして、のどを温めるだけでは、全くもって不十分。
2週間で、朝起きたら、全く声が出なかった回数、なんと4回。。
声が出ないことで、このまま本番を迎えたらどうなってしまうのかという絶望悪循環により、
ストレスは溜まる一方。
声が出なくても、もちろん、稽古はしたいので、
ついつい無理にやってしまい悪化。
演出家との稽古がない時は、共演者と他のスタジオで自主練という形になるのですが、
とうとう、1日稽古を自粛し、自宅療養。
さまざまな方法で、調べに調べ上げた結果、
日本の芸能人や歌手もお世話になっている、
最強の漢方「響声破笛丸」(日本から送ってもらった)と、
フランス式腹式呼吸の筋肉を鍛える方法というものを教えてもらう。
本当に今さらで恥ずかしいが、
腹式呼吸が大事だとわかってはいても、
一大事にならないとなかなか真剣に時間をとれなかった。
通常、腹式呼吸の筋肉をつけるには、通常2ヶ月から3ヶ月くらいかかるらしいが、
本番はもうすぐそこなので、
24時間腹式呼吸を意識して、暇さえあれば腹式呼吸筋トレ。
この筋トレ、大声を出す必要がないので、
楽屋でも、舞台裏でも、出番前でもいつでもどこでもできる超優れもの。
2日間、暇さえあれば続けていたら、
すんと呼吸が下の方に戻ってきて、
なんとおならも止まった!!!
これはいい予兆。
家でくつろいでyoutubeを見ている時も、
ストレッチしている時も、
お風呂でも、
ご飯を食べてる時以外は、ずーっと筋トレ。
俳優の人たちは、
すでに誰でも知っていることだと思うので、
ここに書くのも恥ずかしいのですが、
あえて恥を晒して、
私が行っている方法を一応書きます。
第1段階
歯を軽く閉じて、唇を軽く開けた状態で、スーと極力ゆっくりと息を口から出す。
もう吐けなくなったところで、もう一踏ん張り。
口を閉じると、鼻から自然に空気が入ってくる。
第2段階(フランス語の発音に効くらしい)
口を窄めて、一番小さな穴が空いた状態で、息を吐く。
途中で息を出し続けたまま、小さく声を出す。
慣れてきたら、音程を変えたりするのも有効的。
とにかく、口を窄めた穴から出ている細い息の量を一定に保つことがポイント。
この筋トレを始めた翌日の夜、
4時間半に及ぶ、本番同様の通しリハーサルが行われたのですが、
最後まで順調に声は出続け、
翌日の朝も枯れてなかった!!!
奇跡。
本番は、また予想もつかないような、
アドレナリンの流出によって、
余計な力を使ってしまいがちだが、
とにかく、希望の小さな光は見えた。
周りの人たちに、
あの子あんなんで本番大丈夫なの?って絶対思われてると思っていたが、
ルームメイトの出番が多い女優たちに、
本番声が出なくなったらどうしようと思わず本音をぶちまけてみたら、
みんな通ってきてる道だから大丈夫。余裕。と言われる。
演出家、スタッフ含め、
明日が見えないことを楽しめなかったら、
だれも、演劇ここまで続けてる人なんていないのかも、
と、いきなり肩の力が抜ける。
何より、一番悔しいのは、
観客の前で飛べないこと。
着陸に失敗することも怖くないくらい、
思いっきり飛んで、客席の気流に流されたい。
そのためにも、
1にも2にも、健康管理。
と復唱する日々です。
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©Anne Guillaume

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