先週、ある友人に、
「恋に落ちるってどんな感じ?」
という、野暮な質問をしてみたところ、
割に、あっさりと、
「何事にも、繊細になる。」
というシンプルな答えが返ってきた。
いまだ夏らしい太陽の日差しの下、
日本から沢山の本と服と食料を詰め込んだスーツケースと共に帰宅後、
30分後から稽古という、
なんとも、モンペリエらしい豪快なスケジュールで、
新学期スタート。
そして、2年に1度の受験が行われるENSADでの、
2年生は、
上級生も、新入生もいない、
「私たちぼっち」
11人で、
学校を占領する。
日本でたくさんの人たちに甘やかされた1ヶ月が、
もう遥か遠く。
今週から、11月に行われる各々のプロジェクト・アーティスティック(LA CARTE BLACHE)の
プレ稽古がスタート。
このプロジェクトは、11人それぞれが、
企画書から、公演まで、
それぞれの企画を遂行するというもの。
ただ、ちょっと特殊なのが、
まさかの同時進行。
11個のプロジェクトが同時にスタートし、
3週間で、11個の作品を11人で発表するというもの。
つまり、ある時は、演出家、ある時は、劇作家、
そして、もちろん他の人の作品に役者として絶対的に参加するという、
なんとも無茶苦茶なプロジェクト。
11個の企画書からスタートし、
現在の時点で、10個のプロジェクトが同時進行中。
稽古を進めていくにあたって、
徐々に絞れていけばいいのだが、
なかなか簡単に、あきらめられるものでもないので、
今は、ほぼ、常に全員で、
3時間ごとに、
グループのリーダー(企画者/演出家)が、
代わっていくスケジュール。
私個人の企画は、
ソロなので、
ようやく、テキストが完成し、
美術プランを考えながら、
舞台稽古に入っていく。
もちろん、同時進行で、
その他の6個のプロジェクトにも、
役者として配役されているので、
稽古、稽古、稽古の日々。
それにしても、
何に対しても、
繊細になりまくりであった、
この1週間を経て、
「私の恋している相手は、演劇か。」
と、ふと実感し、
肩を落としつつも、
思わず、ふふふっと笑ってしまう。
急激な環境の変化のせいか、
五日間で、同級生のオリジナル戯曲、既成戯曲合わせて、
9作品を読みきったせいか、
言葉の自由が全くきかなくなる。
自分でも、まるで、
他人の身体を扱っているようで、
懸命に診察を試みるものの、
全く理由がわからない。
水曜日は、
気の知れ渡った、
家族みたいな10人のクラスメートたちと、
いつものバーで、
一杯飲みにいくことすら苦しくて、
家に帰ってもどうしていいかわからず、
とりあえず、フランス語の参考書を買いに本屋にいき、
語学コーナーにたどり着いても、
どれを選んでいいかわからず、
ぽろぽろ涙が出てしまう。
夫婦デュオとして有名な、
ハンバートハンバートの新アルバムが5月に発売されたというニュースをみて、
曲を聴いてみる。
ふたりの関係を0から100まで、
見てしまったようなこっちまで照れくさいような、
それでいて、
心から優しい気持ちななれる歌声とクリップ。
そして、やっぱり一番は、『おなじ話』
よく、歌を聞いて、
自分の人生と重なり合って、
涙が出てしまうという話を聞くけれど、
本当に美しいものは、
もうその美しさの時間の流れがただただもったいなくて、
パソコンのキーボードに、
涙がこぼれる。
恋もしていないのに、
首筋をキラキラと通り過ぎていくメロディーと、
真夏のカルピスみたいな歌声と、
そして、
皮を剥きすぎて、
随分とちっぽけになってしまった、
タマネギの芯のような歌詞。
極めつけに、
日本語でも挑戦したことのないような台詞の量の、
3人芝居にキャスティングされ、
「いっぱいいっぱい悩んだけど、やっぱりあなたにした。」
といった、企画者の女の子の目を思い出して、
喜びとプレッシャーのなか、
ひたすら発音の練習。
30回目くらいに、
突然、
ふわっと今にも甘い匂いを醸し出す勢いで、
イメージが広がって、
やっぱり、
どうして、
また涙がこぼれてしまう。
2年生になったら、
少しくらいは、
こなれてくるのかと思いきや、
私のへっぴり腰レベルは、
大したものだった。
それでも、
今週、ようやく一人芝居のテキスト第一稿が完成し、
ドラマツルギー担当の男の子に提出。
人とつながることで、
頭の中にある妄想が、
一気に、具体化していく。
無理矢理に、
打ち合わせの約束と、
それに伴う、
締め切りを、
つくる。
全員が、
あるときは、社長で、
あるときは、社員。
立場に応じて、
態度も変わる。
社会の中の役も、
作品の中の役も、
変わる、変わる。
責任を持ってみる練習ができる環境に心から感謝。
とは言うものの、
恋ではないので、
繊細になっているだけでは、
前に進めない。
無くした自信は、
無くした場所でしか、
取り戻せない。
また、
1から、
ちぐはぐにも程がある、
大胆な情熱と、
つたない言葉で、
自分の想いを、伝える練習の、
はじまり、はじまり。
自分の想いを伝える=
他人への興味=
愛を語る=
演劇。
宮崎駿監督との名コンビ、
スタジオ・ジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏の座右の銘。
『どうにかなることは、どうにかなる
どうにもならんことは、どうにもならん』
それなら、
どうにかなるのか、
ならないのか、
私は、
いますぐ、試しにいかなくちゃ!
