波乱の第一志望校への受験!!

公演を終えた翌日、
昨日は、朝5時に友達の車でパリを出発し、
レンヌにあるテアトル・ナショナル・ブルターニュ(TNB)にある、
コンセルバトワールを受験してきました。
10時集合となっていて、
車でパリーレンヌ間は3時間半と言われているので、
余裕のはずだったのですが、
なぜか渋滞もしてないのに、
遅刻ぎりぎり。
3人で大荷物を抱えて、
近くの駐車場から全力で走りました。
そして、なんとか間に合って、
受付をすると、
私たちの順番が、それぞれ2番、3番、4番だったことが判明。
もはや、息もテンションも心拍数も全部あがって、
受験に挑みました。
TNBは、3年に1回15人しか入れないという、
とっても贅沢でとっても難関な学校。
概要:http://www.t-n-b.fr/fr/ecole_tnb/actualites/fiche.php?id=451
前回のグループの中に、数人外国人もいたりして、
ちょっと他のコンセルバトワールとは違う独特な雰囲気があります。
そして、なんと今年、
国立コンセルバトワールの2200人の受験者に匹敵する、
2000人以上が、願書を出したことで、
学校側も、
予想外の事態に大パニックだったようです。
ということで、1次試験はなんと、1ヶ月間。
課題も、急遽ひとつ追加されたり、
試験日程を知らせる通知が10日前に届いたりと、
かなり慌ただしかったです。
私にとっても、運の悪いことだらけだったのですが、
時間がないことは、
大した理由にもいい訳にもならないので、
とにかくやるしかない!
TNBの課題は、
1、指定された劇作家(ラシーヌ、シェイクスピア、モリエール、チェーホフ、ボムラ、ビナベール、ロドリゴ・ガルシア、ラガルス、トポーなど)の中から3分間のシーンをつくってくること。
2、机、椅子、花、ろうそく、果物の中から複数もしくはひとつを使って、”CONFLICT”(対立・葛藤)の概念を3分間の作品にすること。
3、指定されたダイヤローグのシーンから、好きな役を選んで台詞を暗記する。そのあとの指示は当日発表される。(チェーホフの『イワーノフ』『かもめ』、モリエール『タルチュフ』)
課題1は、以前に扱っていたジョエル・ポムラの『うちの子は』。
以前に、発表していて、
後半のモノローグが大好きで、
いつやっても興奮するので、迷わず選択。
謎の全然自由じゃない自由課題は、
ちょっと「ズル」して以下のようなものに。
ピアノの椅子を持って、ご機嫌で登場。
ピアノの椅子の上に正座。
「みなさん、こんにちは。
私は、いま、ここに来ることが出来て、
本当に本当に嬉しいです。
私が、いまどれだけ幸せに満ちていて、
すごく元気だ、ということを表すために、とっても喜劇的な歌舞伎のシーンを発表したいと思います。」
とフランス語で前置きして、
ピアノの椅子の後ろに回り込んで両手で
「ハッ!」とかけ声をかけて、
ピアノの椅子を頭の上にかかげて、
「外郎売」の台詞を大声でしゃべり倒しました。
1分間経過したあたりからが、
「対立・葛藤」の概念の始まり。
笑顔で元気に頑張りたくても、
重くて重くて、
声がおかしいことになってくるし、
手はしびれてくるしで、
「苦しみ」が、舞い降りてきます。
それでも、私は一生懸命「喜び」を出そうとします。
腕が痛くなってしまうので、
ほとんど稽古が出来ず、
3分間ピアノの椅子を持ってられたことはなかったのですが、
当日は、気合いでやりきりました。
審査員も、私も、
途中からめっちゃ笑ってしまって、
本当に楽しかったです。
以上、二つを終えて、
控え室で待っていると、
係の人が、引き続き、試験を受けてください、と言いに来ました。
これが、事実上の2次試験。
私が、課題3で覚えていた『イワーノフ』シーン9の、
TNBの次期ディレクターのエリック・カスカードが以前演出した同じシーンの 
ビデオを観て、演技以外の演出を覚えて、
同じように発表するというもの。
もちろん、パートナーは決めて来ていないので、
それぞれが、ばらばらのシーンを選んでいました。
しかも、その回の受験者で2次にいけたのが、
私と私のパートナーをしてくれていた2人(彼らも受験者)の3人だったので
3人で、それぞれが、
また自分のシーンと他の人のパートナー役を覚えなければならず、
てんやわんや。
しかも、時間は45分くらいしかなかったと思います。
それでも、気の知れあった仲間なので、
「そこ、違う!」
とか、がつがつ言い合ってなんとか、
間に合っていませんでしたが、
TNBの以前、ロメオ・カステルッチが使っていた舞台で、
発表しました。
快感!
この試験が来月の18日まで続くので、
結果は、まだまだ先ですが、
やれるだけのことはしました。
情熱、捨てるな!!!

波乱の2次試験、アスリート的演劇の捉え方

例えば、
今日の夜この場所でこの時間、本番をむかえるのは、
昨日の私でもなく、
明日の私でもなく、
今日の午前中の私でもなく、
いま、今夜のわたしだ。
ロンドンオリンピックの選考会で日本代表選手が決まったそうです。
選考基準、厳しい。
http://swimmingview.net/news/maingame/2012londonolympics/2012年ロンドン五輪日本代表選考基準.html
その日、1日で、すべてが決まる。
国立コンセルバトワールの2次試験、
審査員15人の前で、
3分のシーンを1日1作品づつ2日間かけて発表します。
私は、この試験に失敗しました。
絶対受かるだろうと思われていた子が落ちたり、
いろいろ波乱な結果ではありましたが、
私は、確実にベストが出せなかった。
ということで、納得しています。
というか、納得せざるを得ません。
空間を、揺さぶれなかった。
365日中、
300日だけ輝くのか、360日輝けるか、
はたまた365日毎日輝けるのかの差だと感じました。
練習でいくら新記録を更新しても、
本番で更新できなければ意味がない。
ということで、
5月からの試験に向けて以下の記事を読んで勉強しています。
一流アスリートに学ぶ“本番力”
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100520/92444/?ST=career&P=1
余談ですが、
試験会場には、
なんだかんだ美男美女が多かった。
美男美女というか、
やっぱり自分のことが好きな人には、
外見に表れるものだと実感。
私の身体と顔が、
既に履歴書みたいなものだ。
もっともっと、たくさん、
書き込みまくろう。
受験失敗後の母からの手紙。
「どんなグループにも分母と分子がいる。
誰だって選ばれた分子になりたいけれど、
大半は分母で終わる。
でも、分母が大きくなければ、
分子の価値も認められない。」
やるだけのことはやって挑んだ2次。
いまのところ、割と質のいい「分母」ですね。
わたし。
写真(2012-02-22 09.01) #2
しっかり鮮やかに落ち込んで、
これからは、
脳も、身体も、
演劇アスリートを目指します。

フランス演劇界の巨匠 ~featuring美空ひばり!!

すでに、私の定番になりつつあるシーン、ポール・クローデルの『交換』
1月頭から稽古を初めて、
受験でもすでに、2回発表していて、
クラスでも、何度となく発表しているシーン。
いかに、くりかえし行われる「本番」をフレッシュに保つか。
うまくいった次の回こそが、恐怖なのが演劇。
先週の月曜日にクラスで発表したときは、
あり得ないほど最悪で、
自分でも吐き気がするほどでした。
なにもかも完璧なのに、
なにも「生まれてない」
思わず、「稽古のやりすぎ」だと思って、
距離を置こうかとも思ったのですが、
冷静に考えてみると、
気持ち悪いときは、
きっと、相手が変わっても同じ演技するんだろうな、
ハイパーエゴイスト人間になってしまったとき。
稽古をやめるなんて、
あまりにも若造のくせに怠惰ですし、
「やれば、やっただけのこととが確実にある」
という確信が失われるのも癪だったので、
とりあえず、スタジオへ。
というか、「稽古のやり過ぎ」という悪化原因を認めてしまったら、
もはや、演劇の「反復性」を無視することになる。
などと、もやもや考えながら台本を読んでいたら、
ふっと、美空ひばりの『真っ赤な太陽』が頭の中に流れてきました。
速攻、家に帰って、
you tube検索したら、
最高な動画を発見!!


これは、もう「レキ」という私が演じている役のために存在するような歌だ!!
何故か、
必死に物まねを練習して、
気づいたら、早1時間。
思わず、自分の必死さに笑ってしまいました。
はやく皆に発表したくて、
昨日、ルクソンブール公園でのミーティングがあったので、
そのときに皆に『真っ赤な太陽』をお披露目。
みんな、大爆笑で、
速攻覚えて、
「真っ赤に燃えた〜♪」と、
歌っていました。
そして、今日、クラスで発表。
ただのクラスでの発表なのに、
うまくいくか、
死ぬほど緊張。
「真っ赤に燃えた〜、太陽だから〜♪、
 真夏の海は〜、恋の季節なの〜〜♪」
そこから、台詞に突入。
今まで通りの演出プランなのに、
ぷるぷるの感触でした。
パートナーもご機嫌。
スクリーンショット(2012-04-02 22.12.20)
終わってから、鼻歌で『真っ赤な太陽』歌いながら、
二人の絵を書いてくれました。
右側が、私らしい。
それにしても、美空ひばりは、やっぱり伝説の人だと改めて認識。
外国人が聞いても、
いっぺんで、
歌詞も曲も覚えてしまって、
みんな頭から離れないー!!
と、困っていました(笑)

初めての地方遠征、ついでにゲリラ公演!!

昨日は、リールの高等コンセルバトワールの一次試験で、
TGV(フランスの新幹線みたいなもの)に乗って、
パートナーたちを引き連れてリールに行ってきました。
http://www.epsad.fr/
試験会場は、なんとテアトル・ド・ノードという、
リールで、一番有名な劇場。
スクリーンショット(2012-03-17 10.17.03)
見た目は、地味ですが、
中に入ると美術館のようで、
とっても豪華でした。
劇場のロビーを解放してくれていて、
2時間、念入りにアップ。
3つシーンを用意して、
2つ発表することになっていて、
1つ目のシーンだけ、
自分で選ぶことが出来ます。
わたしが、一番に発表しようと思っていた、
ベルナール‐マリ・コルテスの『ロベルト・ズッコ』の相手役の子が、
寝坊して、
TGVに乗り遅れて、
TGVの中で、他の子が急遽台詞を覚えたりして、
てんやわんやだったのですが、
なんとか、ぎりぎりに間に合って、
わくわくしたまま、発表!
バイト先の寿司屋で、借りてきた急須とか湯のみとかお箸とかつかって、
バージョンジャポンでやりました。
今いる15区のコンセルバトワールを受験したときに使ったテキストで、
そのとき演じた印象が強すぎて、
なかなか越せないでいたのですが、
新しいパートナーと、
新しい場所で、
今までで、一番楽しかった。
そのあと、
近くのカフェでご飯を食べながら、
3つ用意して来たのに、
最後の1つを発表できなかったのは、
やっぱり役者として、不完全燃焼だよねー、
という話になって、
いきなり、クラウンの自由課題でクラウンの作品を作って来ていた女の子が、
今からやってから帰ろう!
と、いいだして、
帰りのTGVまで40分しかないのに、
みんなでリールオペラ座前に移動して、
アルバイトで劇場の場内アナウンスをしている他の女の子が、
『紳士、淑女の皆様、こんにちは!
いまから、スペクタクルを始めます。
お金は、いりません!』
と大声で、叫んで、
わたしたちの、リールゲリラ公演開始。
スクリーンショット(2012-03-17 10.17.29)
彼女のテンションも最高潮で、
彼女がコンクールのために用意した、
サラ・ケインの『4.48サイコシス』を脚色したクラウン公演、大成功!
観てくれていたいた人たちが、次は?
言ってくれたんで、
続いてわたしも、発表できなかった、
自由課題の『外郎売』を、発表。
あり得ないほどの声量でやったら、
みんな身体動かしながら、聞いてくれて、気持ちよかった!
最後に、
わたしのパートナーの女の子が、
小さい女の子が怒り狂っているシーンのモノローグを、
今までに観たことがないくらいに、
あばずれになっていて、
大爆笑でした。
わたしが、帰りのTGVまであと15分しかないことに気づいて、
みんなで大荷物を持ちながら走って、
なんとか間に合いました。
座ったとたんに、
全員爆睡。
パリに戻って来たら、
なんだか、旅行から帰って来たようで、
ほっとしました。
スクリーンショット(2012-03-17 10.18.19)
「とことんやる」ことの意味は、
1、受かったときに、「まぐれ」じゃないと思える。
2、おちたときに、「まぐれ」じゃないと思える。
これから、どんどん悪い結果にも向き合っていかなきゃいけないわけですが、
誠実に、落ち込んで、
もういっかい、
その場所から、
「とことんやる」
たぶん、それだけ。

パリ国立コンセルバトワール一次試験

パリ国立の一次試験が終わりました。
パリ国立の一次試験は、3月5日から16日まで。
私の順番は、今日、第一日目の最終でした。
基本的に、試験の日にちは選ぶことは出来ないのですが、
私の相手役が、明日3月6日からアルゼンチンに演劇修行にいってしまうので、
学校側に3月5日を頼んでみたところ、
あっさりOKが出ました。
フランスのいいところは、とにかく交渉次第で、
どんな物事も動いていくこと(笑)
どうして、一次試験の日程がこんなに長いのかしらと思っていたら、
受付のお兄さんが、
「今年の受験者は2100人です。」
と、言っていました。
そのうちの1300人が女性だそうです。
やっぱり、日本でもフランスでも女優の方が倍率高い?
第一次試験の課題は、全部で4つ。
しかし、そのうち発表するのは2つでそれは当日、
試験官によって指定されます。
私の演目。
1、アレクサンドラン:ヴィクトル・ユーゴー『王は愉しむ』(オペラ『リゴレット』の原作です)
2、古典戯曲:ポール・クローデル『交換』
3、現代戯曲(1960年以降の作品):三島由紀夫『熱帯樹』
4、自由作品:『外郎売』(歌舞伎十八番)
呼ばれて、相手役2人と、
3人で、教室の部屋に入って行くと、
なんと中世のミニシアターのようになっていて、
お城の一室のようだったので、
思わず、
「こんな素敵なところでやっていいんですか?」
と、聞いてしまいました。
審査員は全部で5人。
今日だけでも、私で50人目なのに、
びっくりするほど感じがよくて、
こちらまで、自然に笑顔になりました。
噂通り、一つ目のシーンは自分で選択。
一番、自信があったのは、
自分でアレンジしたハイパー『外郎売』だったのですが、
さすがに、いきなり日本語でやるのもおこがましいと思って、
三島由紀夫の『熱帯樹』を選択。
私が飼っていた小鳥を殺すシーンなのですが、
昨日の深夜に思いついて、
鶴を80羽ちかく折って、
最初にばらまいて舞台美術にしました。
とにかく、衣装も舞台もシンプルに。
さすがに、極度の緊張…
2つ目に、試験官から指示されたのは、
まさかの『交換』
これも、噂で、
今年から国立のコンセルバトワールではアレクサンドランのシーンを発表することが、
絶対だと聞いていたので、
鵜呑みにして、
一番、発音もアレクサンドランも練習した『王は愉しむ』は、
指定されるだろうと思っていたのに…
残念だけど、
人生こんなものですね。
『交換』の役は、
女性二人のシーンで私の役は、
相手の夫を寝取った熟年女優の役。
フランスの演劇界では、誰もが知っているであろう有名なシーンだったので、
知らないことをいいことに、
既存のイメージをぶちこわしてやろう、
と挑みました。
そしたら、なぜか、コメディになってしまった。。
これで終わりかと思ったら、
試験官から、
歌舞伎の口上も、やってもらっていいですか?
と言われたので、
嬉しくて、
衣装を着替える時間ももったえなかったので、
セクシーなワンピースのまま、
正座して、
『外郎売』をやりました。
フランスでは、とにかく、
「演じる」技術よりも、「語る」技術を求められているように、
日頃から感じていたので、
まずは、フランス語で、
「紳士、淑女の皆様、こんばんは。
今日は、皆さんにこの奇跡的な薬をご紹介したいと思います。
この薬を飲むと、なんと滑舌がよくなります!」
と、しっかりと試験官ひとりひとりとコンタクトをとってから、
日本語のテキストに入りました。
あの5人の集中力の中でやる「外郎売」ほど、
気持ちのいいものはなかったです。
これが、観客としか起こすことの出来ない、
化学反応なんだな、
と、改めて実感しました。
終わってから、
フランス語、いくつか質問されて、
台詞以外のフランス語は、もっと頑張らないとね、
と、言われてしまいましたが、
(おっしゃる通り…)
最高のパートナー2人と、
稽古して稽古して、
一緒に試験が受けられたこと。
悔いなし!!!