公演期間を1週間から1年にする方法。

初めての滞在制作は、
完全なる離島。
一番近くの港から、30分船に乗ってたどり着いた、
フランス西部にある島、ユー島。
ゆー3
夏の間だけ、観光客で、人口が3倍以上にもなるそう。
ユー島の市の助成で、
1年間を通して制作していくため、
今回は2週間のみの滞在。
普段は結婚式場の控え室にもなる、
スタジオを貸し切って、
創作を行う。
稽古場
滞在制作の最終日、
中間発表として、
島の人たちに向けて公演をする。
元ダンスホールだった、
レジデンス施設付きの劇場、
le Casino に、
予想を完全に上回る数の観客が足を運んでくれた。
公演後、劇場は、
バーへと早変わりし、
公演時間よりも長い時間、
お客さんたちとディスカッションが行われる。
このように、
創作と公演を繰り返しながら、
より多くの助成金申請のための、
書類を作成し、
創作環境、公演の機会、財源、
この3つを同時に探しながら進めていくのが、
フランスにおける若手企画の過程なのかと想像する。
次のレジデンスは、ブルターニュになる予定。
このように、場所を転々としながら、
さまざまな観客とおしゃべりしながら、
創作が進んでいくことは、
どんどん家族が増えていくような感覚。
そして、
明日から新学期。
最終学年の1年を迎える。
職業としての俳優ということを考えたときに、
作品形態にかかわらず、
ひとつの舞台芸術作品を、
より長期的に上演していくことなのではないかと思う。
それは、プロのプロダクションと契約を結ぶ時もそうだし、
個人のプロジェクトとして、
劇場のプログラムを組む人に、
売り込んでいく場合もそう。
お金は、
持続可能な、
未来のあるプロジェクトにしか動かない、
というのが最近の実感。
特に、舞台芸術の場合、
映像で残しておけるものでもないし、
いかに、ひとつの作品における公演の期間を増やせるかということが、
同時に、創作環境の向上にもつながっていくのでは。
未知の世界すぎて、
わからないことだらけだけど、
とにかく、
この1年は、
芸術家を支える制度等も含めて、
「職業」としての「俳優」というものを、
あらためて考え続けたいと思う。
そして、
「職業」というかたちになっても、
いかに、
「夢を見続けられる」精神力と体力を、
きちんと身につけるかということ。
なには、
ともあれ、
俳優の前に、
人間だから、
生活していかないと!
らぶ
また、いっとき離れ離れになる、
最愛の同志たちと。

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フランス語が話せるようになった私が本当にしたかったこと。

さて、夏休み真っ最中でございます。
2014-2015シーズン、
最大の締めくくりは、
Fontainebleau(フォンテーヌブロー)でのプレ・レジダンス。
パリから車で1時間ほどで、
あっという間に自然の中。
今回のレジダンスメンバーは、
なんと、3年前に卒業した、
パリ15区のコンセルバトワールのメンバー。
ここで、私のフランス演劇生活はスタートした。
そこで出会った最高の同志たち、
そして演出家でもある恩師。
イエスとノーくらいしか、
まともに喋れない中で、
真摯に時間をかけて、
外国人である以上に、
ひとりの人間として、演劇人として、向き合ってくれた人たち。
いままでに、いろんな人たちに出会ってきたけれど、
彼ら以上にチームでありながら、
同時に「憧れ」が消え続けない人たちはいない。
この時に出会った恩師との時間の中で、
初めてフランス語で執筆し、演出した、
ドストエフスキーの小説をアダプテーションした一人芝居がなかったら、
いま、フランスで演劇を続けている自分はいないと思う。
そんなメンバーが3年の時を経て、
再集結。
盛り上がること間違いなし。
あらかじめ、演出家から、
メールにて与えられていた創作課題を、
森の中、
石の山、
家の中庭、
倉庫、
ありとあらゆる場所で、発表していく。
大好きな俳優たちが、
街も道も家も森も、
すべてを「劇場」に変えていく。
魅了されるから、
魅了したいと思う。
聴いてほしいから、
聴きたいと思う。
当時、全く言葉がしゃべれない私が、
一番、言葉を交わしたかった人たちと、
緩やかに流れる、
更けても更けても、
明けない夜。
あんなに自分の気持ちを伝えたいと、
話すことに躍起になっていたのに、
いざ、話せるようになってみれば、
一番、愛おしいことは、
彼らの話を「聴く」ことだったような気がする。
パリに戻ってきた数日後、
友人から送られてきた、
新聞の切り抜き。
「聴くとは、動けなくなることだ。」
きく
映像作家、濱口竜介さんのこの言葉に、
鷲田清一氏が続ける。
「心の震えに触れて、身じろぎできなくなることだ。
 そして、それにとことん身を晒すこと。」
本当に聴くということは、
いったん口を「噤む」ということなのだ。
ヨーロッパでは、
口が勝負なんて言うけれど、
実際、それは半分当たっていて、
自分の意見を言わなかったら、
やる気がないと思われてしまうことだってある。
そんなヨーロッパでも、
「噤む」ことが成立する、
創作環境がある。
人間関係がある。
きくきく
フランスに渡って3年目、
舞台の上で、
自分の言葉が観客に伝わらないのではという恐怖にかられて、
発音をメインにやってきた私だけに、
ここらで、小さな進路変更。
私の今年の目標は、
たくさん聴いて、
たくさん読むこと。