オンライン版 市原佐都子『妖精の問題』、無事終了しました。
この作品は、2017年に、私のほぼ一人芝居として初演された作品で、
文字通り、血の滲むような思いで創作した。
俳優の私からみた、『妖精の問題』の記録。
東京初演:「いい俳優」なんて存在しない説
横浜再演:「効率の良さ」への楽しい抗い方
京都再演:「インストゥルメンタル」俳優の憂鬱、「コンサマトリー」俳優の爽快。
横浜再演の時に、もう何十回とみているのに、初めて見るかのように、
2部の「ゴキブリの歌」を、
音響デスクで、ノリノリで聞いている市原さんの顔をいつも思い出す。
市原さんと『妖精の問題』をzoomで再演しようという話が出た時から、
はっきり言って、
「このコロナの時期に、演劇人として、なにか社会のためにできることがあるか」
なんて、考えたことは一度もない。
私は、ただただ、このコロナ騒ぎが終わった後にも、
市原さんに作品を創り続けてほしいと思っていて、
そのためだったらなんでもやりたいと思っていた。
ぼんやりと、社会について何かを考えたり、願ったりということはあるけれど、
具体的に行動を起こせるほど、何かを考えたり、願ったりというのは、
本当に個人的な小さな小さな気持ちだったりする。
実際、毎週オンライン上でリハーサルを重ねるごとに、
仲間が増えて、一人芝居を6人で上演することとなった。
個人的には、
演劇が「超」価値を持っている国、フランスから、
今、日本に戻ってきていて、
日々、フランスでは必要のなかった「演劇人として堂々と生きる練習」をしている。
今、日本の自宅は、会社が閉鎖されても、リモートワークできちんと稼いでいる夫と、
劇場が閉鎖されて、失業保険をもらいながら、趣味と演劇に興じる妻(私)が、
同居している。
フランスから戻ってきた当初は、
オンライン稽古やオンラインヨガ、英会話などをする際、
相方の仕事の邪魔にならないように、と心がけていただが、
働き方は人それぞれ。
今、やっていることが、直接的に収入につながらない仕事だってある。
ということで、今は、日々「堂々と生きる練習」をしていて、
自宅から出演したこのZOOM演劇も、思い切り演じることができ、
小さな前進を感じている。
市原さんの『妖精の問題』のテキストより、
私は見えないものです
見えないことにされるということは
見えないことと同じなのです
私たち演劇人は、今、「見えないことにされて」いるかもしれない。
「見えないことにされて」いるときこそ、
堂々と生きる。
そして、自分にとって必要なものは、
全力で守る。