私たちが小学生の頃、
修学旅行の前の週に、
女子だけ別の教室に集められて、
生理用品の使い方の説明を受けた。
生理という現象に対する理解より前に、
すべての女子が真っ先に理解したこと:
「生理」は、恥ずかしいことで、男子に隠すべきことである。
口にすることも憚れるような「生理」という言葉に、
伝染病のようなイメージが付きまとい、
初経を迎えてすぐのころは、
自分の血がついたパンツが気持ち悪すぎて、手洗いできず捨てたこともある。
さて、それから20年後。
「生理」は病気でも、恥ずかしいことでもない、
ただ月に一回女性に訪れるちょっと面倒くさい期間である、
(その数日前からちょっと機嫌が悪くなるので要注意)
という認識をしっかりと共有しているフランスの男性、女性たちに囲まれて、
生理中の舞台出演(裸)での愉快な裏話がたくさんあった。
まずは、タンポンの挿入。
普段、使用していない私は、
タンポン装着に非常に苦労する。本番前のストレスが重なればなおさら。
全員ウェディングドレスで始まるオープニング前、
かさばるウェデングドレスをたくし上げて、
タンポンが入らず、トイレで半泣きしていたら、
私よりさらにかさばるウェデングドレスを着た共演者の女優が走ってきて、
「力むと膣が閉まっちゃうから、呼吸してー。吸ってー。吐いてー。」と、トイレの扉越しに指示。
「入ったーーーーー!」と叫ぶと、彼女に強く抱きしめられる。
涙で崩れてしまった化粧を直しながら、
ダッシュで舞台袖に戻ると、
女性の衣装さんと男性の技術スタッフが、
ハサミと黒の油性ペンを持って待ってくれている。
タンポンの白いひもが、股から垂れ下がっているので、
それを黒く塗ってから、ちょっと短く切れということらしい。
真剣な顔の二人に思わず、笑ってしまう。
時間はないので、自分の毛の色に合わせて色を塗る。
これで、ようやく集中して、舞台で思いっきり演技ができた。
翌日は、慣れたもので、前日の過程をひとりで淡々とこなし、
共演者への男の子に、
「生理だからちょっと臭うかも」と伝えるという配慮も忘れず、
(「全然気にしないで、俺の汗のが臭いから」とさわやかに返される)
もうこれで完璧と確信して、舞台に出る。
1部後半、下半身に変な感じがすると思いながら、
1部と2部の休憩時間に舞台袖にはけると、
ドレスの下が血まみれになっている。
ホラー映画のようなグロテスクな惨状に、小さな悲鳴をあげる。
オートクチュールの衣装までも血だらけ。
男性の衣装さんが走ってきて、
「人の血ですか?血糊ですか?」と真顔で質問される。
「人の血です!」
「了解しました」と、私の衣装を持って去っていく。
どうやら、血糊と人の血とで使用する洗剤が違うらしい。
私は、このような話を、よく観に来てくれたお客さん(女性でも男性でも)と笑って話すのだが、
日本語だとやはり躊躇してしまうところはある。
日本語で話す「生理」の話に、「下品」「汚い」というイメージが付きまとっているからである。
そんなイメージをぶっ飛ばしてくれた、
最強の本がこちら、スウェーデン初の女性器と生理に関する漫画:
とにかく、絵が最高に可愛い!
フランスやドイツでも大ブームになった本。
タブーとされている言葉を、
あえてどんどん使っていくことで、
読者のタブー意識もどんどん溶かしていく、スマートなギャグ・コミック。
フェミニズムの問題に関して、
男性の意識を変えるのは、
いつだって女性。
生きづらさを感じていないのに、
自分を変えようと思う人なんていない。
でも、私が、その生きづらさもひっくるめて堂々としてれば、
自分の半径1メートルから変わっていく。
だから、私にとっては、
男性が生理に関するネタで笑っても、それはセクハラではなく、歩み寄りです。
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