俳優の条件2019:精神的にも肉体的にも暇

日本で年越しをして、

あいかわらず、落ち着かない雰囲気のパリに、

公演のため帰ってきました。

正月気分が抜けないまま、帰国翌日から稽古開始。

 

昨年11月から続く『黄色いベスト』運動が、毎週勃発する土曜日、

昨日は、パリ9区のパン屋さんで爆発。

共演者が、3軒となりに住んでいたそうで、騒然。

最近、フランスで何か、事件が起こると、すぐに、テロか?デモか?と反射的に想像してしまうが、今回は、ガス漏れが原因だそう。

 

心がざわざわしている状況での稽古ほど、効率の悪いものはない。

俳優は特に、「周囲の空気を聞く」ということも、仕事の一部だから、

演劇の現場での、空気感染は非常に早い。

現場に、健康上の心配を抱えている人がいたり、精神的に弱っている人がいたり、

そういう空気のグループへの感染力は凄まじいものがある。

もちろん、逆も言える。

チームの中で、プラスエネルギーが循環するする環境では、

一人の力は、簡単に2倍にも3倍にもなる。

 

そもそも、スマートフォンひとつで、世界中どことでも繋がれるこの時代に、

強く、「いま」「ここ」につながる集中力を維持するのは、

実際、簡単なことではない。

いかに、精神的にも、肉体的にも『disponible』な状態に身を置けるかが肝。

フランス語のdisponibleとは、英語のavailableに相当する単語で、

人に対して使う場合は、「時間がある」

本来の意味としては、「利用可能」

要は、「使い物になるかどうか」!

 

例えば、名詞形のアベイラビリティー【availability】は、

IT用語では、以下のような説明がされている。

コンピューターやネットワークシステムの壊れにくさのこと。システムの障害・停止・破損が発生しにくく、それらの不具合が生じた際にも速やかに復旧できる場合、「アベイラビリティーが高い」という。可用性。稼働性。

 

この「アベイラビリティーの高さ」の定義を、

俳優に当てはめると、

かなり、私の理想に近い「可動性の高い」俳優像と重なる。

「システムの障害・停止・破損が発生しにくく、それらの不具合が生じた際にも速やかに復旧できる。」

演劇的に翻訳すると、

「本番及びリハーサルにおいて、ミス、停滞、健康上の不調が起こりにくく、それらの不具合が生じた際にも、すみやかに復活できる。」

 

つまり、クリエーションの現場において、

いかに、自分自身を、

「精神的にも肉体的にも暇」な状態におけるか。

 

さまざまなことがらを、同時進行に進めていくことが、

可能かつ効率よく見える世の中ではあるが、

演劇の現場では、必ずしもそうではない。

目まぐるしく動く現代社会だからこそ、

不効率な「暇」という状態が、効率をあげる場合もある。

 

 

そんな「暇」な心と体を探しながら、

本日、最終リハーサル。

明日から、昨年アビニョン演劇祭公式プログラムで発表された、

『Certaines n’avaient jamais vu la mer (邦題:屋根裏の仏さま)』のパリ(郊外)ツアーです。

http://www.theatre-quartiers-ivry.com/fr/la-saison/spectacles/certaines_n_avaient_jamais_vu_la_mer?fbclid=IwAR1NO1zqwwKR3Rgr4xMd6fmIHF45gqpMT2_aad6IwQCdUHOT5Dk_dQiLQg4

 

 

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© Christophe Raynaud de Lage

 

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