日本で年越しをして、
あいかわらず、落ち着かない雰囲気のパリに、
公演のため帰ってきました。
正月気分が抜けないまま、帰国翌日から稽古開始。
昨年11月から続く『黄色いベスト』運動が、毎週勃発する土曜日、
昨日は、パリ9区のパン屋さんで爆発。
共演者が、3軒となりに住んでいたそうで、騒然。
最近、フランスで何か、事件が起こると、すぐに、テロか?デモか?と反射的に想像してしまうが、今回は、ガス漏れが原因だそう。
心がざわざわしている状況での稽古ほど、効率の悪いものはない。
俳優は特に、「周囲の空気を聞く」ということも、仕事の一部だから、
演劇の現場での、空気感染は非常に早い。
現場に、健康上の心配を抱えている人がいたり、精神的に弱っている人がいたり、
そういう空気のグループへの感染力は凄まじいものがある。
もちろん、逆も言える。
チームの中で、プラスエネルギーが循環するする環境では、
一人の力は、簡単に2倍にも3倍にもなる。
そもそも、スマートフォンひとつで、世界中どことでも繋がれるこの時代に、
強く、「いま」「ここ」につながる集中力を維持するのは、
実際、簡単なことではない。
いかに、精神的にも、肉体的にも『disponible』な状態に身を置けるかが肝。
フランス語のdisponibleとは、英語のavailableに相当する単語で、
人に対して使う場合は、「時間がある」
本来の意味としては、「利用可能」
要は、「使い物になるかどうか」!
例えば、名詞形のアベイラビリティー【availability】は、
IT用語では、以下のような説明がされている。
コンピューターやネットワークシステムの壊れにくさのこと。システムの障害・停止・破損が発生しにくく、それらの不具合が生じた際にも速やかに復旧できる場合、「アベイラビリティーが高い」という。可用性。稼働性。
この「アベイラビリティーの高さ」の定義を、
俳優に当てはめると、
かなり、私の理想に近い「可動性の高い」俳優像と重なる。
「システムの障害・停止・破損が発生しにくく、それらの不具合が生じた際にも速やかに復旧できる。」
演劇的に翻訳すると、
「本番及びリハーサルにおいて、ミス、停滞、健康上の不調が起こりにくく、それらの不具合が生じた際にも、すみやかに復活できる。」
つまり、クリエーションの現場において、
いかに、自分自身を、
「精神的にも肉体的にも暇」な状態におけるか。
さまざまなことがらを、同時進行に進めていくことが、
可能かつ効率よく見える世の中ではあるが、
演劇の現場では、必ずしもそうではない。
目まぐるしく動く現代社会だからこそ、
不効率な「暇」という状態が、効率をあげる場合もある。
そんな「暇」な心と体を探しながら、
本日、最終リハーサル。
明日から、昨年アビニョン演劇祭公式プログラムで発表された、
『Certaines n’avaient jamais vu la mer (邦題:屋根裏の仏さま)』のパリ(郊外)ツアーです。
© Christophe Raynaud de Lage