パリからTGVで45分、シャンパンの街、ランスでレジデンスが始まりました。
ここで一ヶ月間、実際に公演をする劇場で稽古をしたのち、
来月7日から、初演を迎えます。
Songes et Métamorphoses UN SPECTACLE DE GUILLAUME VINCENT
月曜日、ランスに到着するとすぐに、
贅沢すぎるほどのアパートに案内される。
荷物を整理して、劇場へ。
劇場に足を踏み入れて、あまりの大きさに足が竦む。
それも、3秒後には喜びに変わる。
ランスの劇場は、私が今一緒に仕事をしているギヨームのカンパニーを10年前からサポートしているらしく、
ほぼすべての作品のレジデンス制作、初演がこのランスの劇場で行われているらしい。
通りで、歓迎がとても温かくて、ファミリー感溢れる感じ。
稽古スケジュールは、今までと変わらず、14時から23時。
間に、19時から20時のご飯休憩を挟む。
劇場の中に、大きな食堂があって、そこで全員で食事を食べる。
今回は、劇場専任のシェフがいて、毎回50人分の食事を用意する。
23時の劇場退館後も、俳優やスタッフ間の話し合いは終わらず近くのバーへ。
ビールを飲みながら、まだまだ作品のことについて話し合う。
もちろん、そんな1日を終えて、翌朝起きられるはずもなく、
お昼近くに起きて、ストレッチしたらすぐまた劇場へ。
モンペリエで3年間、学校に通っていたときも、
周りに日本人はだれもいなくて、
ときどき、不意に襲ってくるひとりぼっちの不安に殺されかけた。
今は、もう稽古に支障はないくらい、話せるようにはなったものの、
休憩時間に交わされるなんでもない冗談の意味はわからなかったりする。
つられて笑うものの、実は全然わかってなかったり。
モンペリエの学校の仲間たちとも、愛想笑いしなくなるくらいの関係になるまで、3年かかったのだから当たり前か。
8月の稽古では、出番も台詞も少ない上に演技も下手で、
私、なんでここにいるんだろうとそればっかり考えていたけど、
今は、出番も台詞も少ない上に演技も下手なのに、
ここにいられるチャンスを利用してやろうと思う。
どんなに、想像力を働かせても、
一回の経験がなければ、わからないことは多い。
フランス語もだいぶ普通に話せるようになって、
発音も昔より全然ましになって、
いろんな演出家といろんな作品を作ってきたけど、
それでも、ここにきて、24時間、学校とはまた違った環境で演劇漬けの生活をしなければわからなかったこと、気づかなかったことしかない。
スタッフとの関係性や、劇場との関係性。そして、共演者、演出家との関係性。
実は、自分にできることなんて何もない。
自分の小ささに落ち込んでること自体が、傲慢な態度なのではないかとすら思えてくる。
それくらい私たちは、いつもちいさな共同体のなかのひとつで、
小さければ小さいほど、いなくなっても誰も困らないかもしれない。
ただ、小さいと感じられれば感じられほど、大きな場所にいるということはまずは認めなければいけないし、
その中で、小さな自分ができる一番大きなことを全うするだけ。
そう考えるだけど、小さくても、どしんと構えていられる気がする。
学校では通用した泣き言が、今となれば甘えでしかない。
私ひとりの「過程」なんてどうでもいい。
いい作品を創るという原理のもと、必要なことはなんでもやる。
最強の共演者たちに圧倒されるなら、
まずは、苦しい休憩だって、一緒に時間を過ごして、
気軽に質問したり、話し合ったりできる関係を作るしかない。
そんなこんなで、休憩時間は一番こころ休まらないときなのです。