8月から、本格的に稽古が始まり、
最初の週は、稽古時間以外、ほぼ寝るという現状のなか、
なんとか生き延びています。
なにはともあれ、稽古時間が長い。
14時から23時の月曜日から土曜日の週6。
稽古初日から、台詞が完璧に入った状態で、
実寸の舞台美術の中で、衣装をつけて、
照明、音響スタッフとともに作業が始まる。
最初の3日くらいは、夕飯休憩後は、
立ってるだけで精一杯というなんとも情けない状態でした。
かつ、疲れてくるとフランス語が喋れなくなってくる病に、
久しぶりにかかりました。共演者、スタッフなど現場の人たちにまだ慣れてないのでなおさら。
4時間半に及ぶ大作のため、すでに、半分以上の部分は、仕上がっているにもかかわらず、
スタッフ全員参加のもと、ここから、二ヶ月の稽古が続き、
ランスの初演を経て、8ヶ月に渡るツアーが始まります。
全く想像できない世界。
稽古は、パリ公演の会場となる、オデオン座のBertiherという場所で行われています。
実寸で、できるのとてもありがたい。
ここの劇場の客席キャパシティーは約500名ですが、
まずは、空間の圧力に圧倒される。
今まで、さまざまなスタイルの演劇を様々な場所で観たきたけど、
演技のスタイルというものは、ほぼ空間が決めるのではないかという実感を持たずにはいられない。
空間によって、一定にまず求められる演技のテクニックだったり、
実際に、外に見えてくる必要がある演技の底辺がおのずと決まってくる。
スタイルの前に、空間にたいして、まず「通用」、もしくは「適応」することが、
最低条件として求められるので、ここまでいかないと演出家との共同作業にまで持っていくことができない。
私の場合、もちろん、これくらい大きい劇場で演技をした経験はほぼないに等しいので、
まずは、そこから打ちのめされる。
ドイツの劇場は、俳優が劇場に所属して、そこの劇場にプログラムされたさまざまな演出家と仕事をするそうだが、まさに、一定の広さのある劇場だと、空間あっての俳優のようなところがあるので、あまりスタイルにはこだわらなくなるのだろうなと、想像した。
というか、今まで、この演出家とは合うだろうなとか、あの演出家とは合わないだろうなとか、考えてきた自分が俳優として、とてもちっぽけに感じられる今日この頃。
合う合わないの話をするなら、求められる演技のスタイルなんかじゃなくて、創作の過程だろう。
そして、ベテラン俳優たちはなんなく空間を制覇した上で、
演出家にさまざな側面を提示していく、アクティブすぎるクリエーションに、圧倒されっぱなし。
そんなこんなでへとへとになってしまった最初の社会人生活。
社会人らしいことといえば、
フランスの会社と全く一緒で、
お昼代に使う、レストランチケットが配給された。小さなことだけど感動。
来週からは、劇場にシェフが雇われて、
劇場ロビーに食堂が開設されるらしい。
28歳にして、こんなこというのもお恥ずかしい話ですが、
お金を稼ぐということは、
本当に大変なことです。
そんなことを考えなら、
お金をかけない夜の散歩で、
3年ぶりのパリを満喫。