一ヶ月に一度くらいは、
必ずと言っていいほど、
なんとかくうまくいかない時期が来る。
理由があれば、それを解決すればいいだけなのだけれど、
何を頑張ればいいのかわからなかったり、
何を乗り越えていいのかわからず、
理由もなく「なんとなく」うまくいかないことほど辛いことはない。
先週は「なんとなく」演出家と波長が合わず、
何を言われても傷ついた。
恐らく私の声が小さいせいで、
ディスカッションの場で、
「何を言ってるのかわからない。」と繰り返し言われた。
言葉のせいではないのかもしれないけれど、
「何を言ってるのかわからない。」と言われると、
自信がなくなって、どんどん声が小さくなる。
しまいには、何もできないような気持ちになってしまい、
ちょっと台詞をつっかえてしまっただけでも、
涙が出てくる。
ただ、こんなことで泣いてると思われると悔しいので、
全然、泣くシーンじゃないけど、
泣いてる演技に見せかけて、
よりいっそう泣きながら読んでやった。
こんな時は、小さなことでも、
すべて自分の存在そのものが否定されたような気持ちになってしまう。
今年の初めに、
映画を一緒に撮影したカメラマンが、
1年生とのスタージュのため、モンペリエに滞在していた。
そんな彼に、元気ないね、と言われて、
ぽろりぽろりと、
今の「なんとなく」うまくいかない現状を話してみたところ、
具体的なアドバイスを獲得した。
まず、クリエーションでの問題は、絶対に外に持ち込まない。
つまり、クリエーションの現場で、
演出家とうまくいかない時も、
それは、現場でのことであって、人間関係が変わるわけではない。
もし、現場で「何を言ってるのかわからない。」と言われるのだとしたら、
問題は、現場にある。
私生活、つまり、私のフランス語にまだ少なからず問題があるとか、
そういうことを問題にしはじめたら、
演劇の現場は、向き合う素材(つまり、自分自信)との距離が、
あまりにも近いので、
私ってなんてだめなんだろう、と、
自己否定につながりやすい。
もっと、ラディカルに、現場の中での原因を考えるべきだそう。
そして、その原因は、
クリエーションに対して、たいてい以下の3つのどれかが足りないらしい。
1,disponibilité ディスポニビリティ(求められた時にすぐに応じられる力)
2,engagement エンゲージメント (コミットする力)
3,investissement インヴェストメント (投資力)
いかに、自分の身体が、クリエーションに対して自由であるか。
いかに、稽古でその空間と時間に強く関わっているか。
いかに、クリエーションに外からの刺激を与えられるか。
よくよく、彼のライフスタイルを検証してみれば、
彼のいう、この三種の神器をいかに使いこないしているかがわかる。
1年生とのリハーサルは、14時から始まるのに、
毎日、9時から、学校に来て、ホールで仕事をしている。
生徒たちも、彼がいつもホールにいることをわかっているから、
気軽に早めに来て、質問したり、相談したりしている。
ミスター・ディスポニビリティ。
信用している人の言うことだけは、
素直に従う方なので、
彼と話した直後から、実践。
今まで以上に準備して、
洋服にもいつも以上に気合いを入れて、
スタジオに向かったら、
自然に声も大きくなっていた。
翌日、前回、泣いてしまったシーンを稽古してたら、
昨日、帰ってから考えてたんだけど、
確かにこのシーン泣きながらっていうのありだよね。
面白いよね。
と、笑顔の演出家。
実は、うまく読めないから泣いただけでした。
と種明かししたら、
よりいっそう笑ってた。
そんなこんなで、
使い続けないと消えちゃう、
とってもフラジールな、
三種の神器を手にした私。
それにしても、
道に迷った時は、
人に聞くのが一番。