28歳を「聞く」。

慌ただしく、

誕生日を迎えて、

新一年生を迎えて、

本番を迎えて、

新たなクリエーションが始まった。

最終学年である今年は、

30代、40代、50代、60代の4人の演出家と、

私たち11人の俳優で、

同じ空間を用いて、

4つの作品を作り上げるという、

とてつもない企画がスタート。

まずは、一番若い30代の演出家と、

ゲオルク・ビューヒナーの『ダントンの死』の、

稽古がスタート。

実はこの作品の中の有名な娼婦のモノローグを、

以前、別の演出家のスタージュで配役されたことがあった。

(過去の記事:https://mill-co-run.com/2014/10/04/living-beahavior-生命的行為へのために、私自ら「実験台」に/

今回の演出家は私が出演していた別の作品を見て、

私に、この娼婦の役を配役しようと決めていたらしく、

私が以前にやったことがあると言って、

岩波文庫の翻訳も持っていたので、

驚いていた。

もはや、フランスで俳優をする上で、

必要な本は、

だいたい自分の本棚から見つかるという今日この頃。

少しづつ、

フランスの演劇界に浸かり始めてきた感じ。

それにしても、

フランスに来て、

もう4年も経つのに、

どうしてもひとつだけ、

惨めで惨めで仕方ない時間がある。

それは、本読み。

台本が渡されて、

初見で、本読みをするときに、

どうしても、

同時に理解して、

台詞を読んでいくことができない私は、

俳優として、

かなり頼りない姿を見せることになってしまう。

こんなわけで、

毎回、新しいスタージュが始まってから、

演出家への信頼を得るまでの、

1週間は地獄。

はっきり言って、

台本を渡されて、

その場で、

理解しながらすらすら読めるようになるには、

少なくとも、あと5年はかかる気がする。

何しろ、今回の作品の舞台背景は、

フランス革命なので、

歴史的背景まである程度わかっていないことには、

台詞を覚えるどころではない。

たぶん、

去年までの私だったら、

完全パニックに陥って、

絶望していたと思うけど、

最近、

少し、「聞く」という行為に力を入れているので、

以前よりは落ち着いて、

この惨めな状況を通り過ぎることができた。

日本の伝統的な芸道のひとつで、

一定の作法のもとに香木を焚き、

立ち上る香りを当てっこすることを、

香道という。

香道では、

香りを嗅ぐのではなく、

香りをに対し、

「聞く」という動詞を使うそう。

心を傾けて香りを聞く、

心の中でその香りをゆっくり味わう、

という意味があるそう。

フランスでは、

この聞くという動詞をやたら舞台芸術の場で多用する。

[écouter]

俳優を褒めるときにも、

彼は「聞く」のがうまいというのをよく耳にする。

ここでいう「聞く」は、

単に、共演者に対して「聞く」のではなく、

空間に対して、

身体に対して、

時間に対して、

香道の「聞く」と同じで、

聞こえないものを「聞く」力が必要とされているのではないかと感じる。

昨年は、

日常生活の中でも、

何かを学び得ようという気持ちよりも、

もう少し、

受動的な気持ちで、

今、自分が置かれている状況を、

「聞く」ことで、

ゆるりゆるりと味わっているうちに、

いつのまにか解決していたり、

ふと振り返ると前進していたりしたようなことが、

多々あった。

いっとき、

日本で話題になった「アンチエイジング」という言葉も、

言い換えれば、

自分の身体を「聞く」ことと同じことだと思う。

「聞く」ことで、

私は、最近、

アンチというよりも、

ウィズという感覚で、

エイジングと付き合っている。

ウィズエイジング。

稽古や本番で、

ハードな日程が続くほど、

身体の感覚が、

確実に20代前半までとは、

違うことがわかる。

食べることも、

運動することも、

眠ることも、

欲求よりも、

自分の身体の意見を優先する。

身体を「聞く」こと。

フランスの現場では欠かせない、

ディスカッションも、

今までは、

自分の意見をいうだけで、

精一杯だったけれど、

他人の意見と、

場の空気を、

まず「聞く」ことで、

そっと考える(味わう)時間をあたえてくれる。

28歳は、

私を「聞く」1年になったらいい。

どこまでも、

些細な音に耳を傾けて、

その香りが消えてなくなるまで、

ゆっくりゆっくり味わうのだ。

WP_20151013_002

それにしても、

初日は、

台本の内容が全くわからなかったので、

悲しすぎて日本に帰りたくなったので、

ノートにトトロを描いて、

気持ちを落ち着かせました。

その香りが消えてなくなるまで、

ゆっくりゆっくり味わうのだ。

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