輝かしい経歴の起業家たちに全く興味が持てない自分を認められず自己嫌悪に陥った時の対処法

演劇を続けている限り、
世の中で起こっていることすべてを、
取り扱う可能性を持っているわけですが、
もちろん、その中には、
全く興味が持てない分野もある。
今回のテーマは、
アメリカの若き起業家たち。
facebook創始者のマーク・ザッカーバーグを始め、
Amazonのジェフ・ベゾス、
そして、googleからスティーブ・ジョブスまで、
現代社会にはかかせない人たち。
そして、今回、招聘されたのは、
3歳しか年が違わない超若手演出家。
彼は、La Manufactureという、スイスの国立演劇学校に付属している、
演出家コースを卒業したばかりの超エリート。
合格者は、毎年6人程度。
2年間かけて、企画から公演まで、
自分のプロジェクトをプロとして実践する。
さて、そんな楽しみな要素溢れる状況で始まった今回のスタージュ。
ふたをあけてみると、
困難にぶちあたる間も無く、
絶望。
はっきり言って、全く興味が持てない。
インタビューなど彼らのさまざまなビデオを見ての、
リサーチ作業。
あるゆる観点からアクセスしても、
彼らの話に全く興味が持てない。
こんな局面にぶちあたったのは、
正直初めてだと思う。
しかし、2年生以降、
学校では、演出家が戯曲を選んでやってくるのではなく、
テーマを持ってきて、
そのテーマに沿って、
それぞれが、自分の作品を創作していく、
つまり、演出家的立場から、稽古を始めるスタイルが主。
どちらかというと、美術系大学の環境に似ていると思う。
興味がない分野の戯曲であっても、
その中に登場する役は演じることはできるかもしれないが、
自主的に、何かを提案していくことは至難の技。
「だって、つまらないんだもん!!!」
さて、どうしたものか。
こういうときに限って、
授業の中でも、個人創作の時間をたっぷりとってくれる演出家。
私は、コンピューターを前に、
ため息しかでない。
最初は、どうにかこうにか、
自分の興味のない分野でも、
有名な起業家のうちのひとりになりきってみるとか、
彼らの講演会等のテキストを練習してみるとか、
簡単なことも考えたけど、
創作という観点からすると、
自分の意思のない場所での取り組みは、
単なる「勉強」であって、「創作」とは言えない。
周りがどんどん、作品を発表をしていく中、
私は、どんどん暗くなっていく。
なぜ、興味が持てないんだろう?
私は、閉じた人間なんだろうか?
というか、社会と隔絶した人間なのだろうか?
そもそも、新聞を読んだりしてなかったからいけないんだ。
いや、むしろ就活を2日でやめたことに問題があったのだろうか?
「情報弱者」という言葉があるなんて知らなかった!
これ、私のこと?
あああ、もう一生、社会人として生きていけない。
とインターネットを無意味に検索しながら、
無意味に時間が過ぎていき、
無意味に自己嫌悪に陥る。
今までの経験から、
この悪循環のループを長引かせるとまずいと、
すばやく察知し、行動に出る。
恋の悩みは、恋で解決。
仕事の悩みは、仕事で解決。
ということで、
演劇の悩みは、演劇で解決!
年が近いというメリットも手伝って、
演出家に告白。
ーどう、進んでる?
ーいや、苦しんでます。
ーなんで?
ーはっきり言って、私、全く興味が持てません。
ー(笑)
ーそして、そんな自分の気持ちを無視したくありません。
ー(笑)
ーということで、成功してる起業家の人たちについてじゃなくて、そんな彼らに全く興味が持てない自分についての作品を作ってもいいでしょうか?
ー(笑)いいよ。でも、面白すぎるから、もっと詳しく聞かせて。
という流れで、このあと、1時間も、
人生相談を兼ねて、
「お金持ち」と「人生の勝ち組」が苦手という話をする。
そして、翌日、完成したのが、
「私の悩み相談」という作品。
日本のサイト、
お悩み掲示板 – みんなの悩み、みんなで解決
というサイトにヒントを経て、
いま授業で扱っているテーマに全く興味が持てないという実際の悩みから、
情報格差社会の底辺に近い場所にいる自分と演劇との関係についてまで、
大好きなドストエフスキーのテキストを織り交ぜながら、
匿名で、掲示板に書き込む形で、テキストを書き上げた。
(少々、演出家の悪口まで書いている。)
そして、それを、発音の先生に限りなくニュートラルな形で録音してもらい、
身体は、一切動かすことなく、
録音をイヤホンで聴きながら、
テキストを口に出していく作品を作った。
演出家は、テキストを気に入ってくれて、
最終的な6月の公演のための戯曲に、
入れたいと言われた。
その作品をみて、他の子が、
別の創作にも誘ってくれた。
悪雲は、
幾度となくやってきて、
逃げようとすればするほど、
私の頭の上で、
深く深く立ち込める。
でも、今は一人で解決できないことを知っているから、
傘を持ってそうな人がいたら、
すぐに入れてもらおう。
そうしているうちに、
すぐ、
晴れるから。

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