スポーツ界でよく語られる、
「ゾーン」と呼ばれる神の領域。
ゾーン体験(ZONE)とは?
アーティストにも、もちろん存在する領域で、
まさに、全能的瞬間。
心理学用語では、
フローとよばれ、
人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態
を指すそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/フロー_(心理学)
私は、先週の木曜日、
おそらく、この「ゾーン」に足を踏み入れました。
演劇の最大のメリットであり、
デメリットでもある、
不確定さ。
どんなに、
素晴らしい俳優でも、
毎日、一定かつ最高のクオリティーを出すことは、
ほぼ不可能に近い。
ただ、そんな、
不安定な芸術だからこそ、
いつでも、もっと遠くに飛べる可能性を秘めている。
初日から、
毎日、自己ベストを更新していったのですが、
作品の向上と比例して、
翌日へのプレッシャーは、
日々増していくばかり。
毎日、
2時間のアップと、
2時間の稽古をしても、
不安は消えない、
究極の精神状態でした。
そこで、
木曜日、
ゾーン体験を説明する慣用句「ビーイング・アット・ワン・ウィズ・シングス」
Being at one with things(物と一体化する)ということで、
完全に、
フランス語を所有して、
今まで、ずっと異物でしかなかったフランス語が、
身体と一体化した感覚に襲われました。
本当に、自由に、
テキストが、自分の口から、
音楽のように、紡ぎ出てて、
相手に届いていく感覚。
時間がゆがみ、
頭の中は、真っ白。
脳とか、
意識とか、
飼いならされすぎている感覚たちが、
一斉に、
無防備になって、
いま、起こっていることに、
素直に、
率直に、
そして、
最高のタイミングで反応していく感じ。
今回の公演で、
裸のシーンがあったことで、
稽古期間から、
ほぼ2ヶ月間、
毎日、服を脱いできたことで、
正直、人生変わりました。
演出として、
いかに、
服を着ている状態との差異を最小限にできるかということだけに、
重点をおいてやってきました。
人間、
経験だけが、どんどん、
先走ってしまうと、
頭がついていけなくて、
中身が、すかすかして、
居心地が悪くて仕方がなかったので、
とにかく、
本を読みあさって、
いろんな新しい価値観にむりやり出会ってきました。
でも、
もう舞台の上で、
観客の前に立ったら、
やることはひとつ。
「何も、考えない。」
稽古は、
まさに、この領域に達するための時間だと思う。
逆に、
これだけ頑張ってやってきました、
という、努力が見えてしまうことが、
語学のハンデがある私にとっては、
一番の恐怖だった。
フランス語の台詞を、
フランス人の俳優、そして、観客と共有することが、
完全に「怖くない」と感じるまでに、
なんと3年もかかった。
今でも、怖い気持ちでいっぱいだし、
明後日からのパリ公演も、
不安でしかない。
でも、これだけはいえることは、
私にとって、
「恐怖」と「敬意」は、
紙一重であること。
演劇が好きすぎて、
演劇が素晴らしすぎて、
何事にも負けない、特別な想いがある。
だからこそ、
「恐怖」なしには、
立ち会えない。
高校生の時から、
好きな言葉。
「畏敬の念」
今日も、不安で眠れない夜を過ごしながら、
やっぱり、
演劇が好きだ、
と思う、ベッドの中。
嬉しいことに、
新聞に私たちの公演が掲載されました。
しかも、私が演じたシーンに関して、
言及してもらいました。(Orgie)
明日から、モンペリエを離れ、
パリでアウェイ公演です。
http://www.theatredelaquarium.net/IMG/pdf/ensad_-_montpellier.pdf