私の人生において、
生涯、
賭け事にはまることはないだろうと思う。
なぜなら、
私にとっての賭け事は、
舞台芸術だから。
モンペリエに引っ越してから、
どうしても観たい作品があれば、
1ヶ月に2度あるかないかの、
貴重な週末休みに、
往復7時間と、
交通費約15000円かけて、
パリにとんぼ返りする。
しかも、
学校の休みがいつとれるか、
直前までわからないので、
チケットはたいてい完売、
当日券に並ぶ。
今回の賭けは、
完全に、
ハイリスク、ハイリターンに終わった。
お目当ては、
THÉÂTRE DE LA VILLEで上演中だった、
Dave St-Pierreの千秋楽。
1時間前に、劇場に到着するも、
すでに、当日券待ちの長い列。
3時間半かけて、
観に来ているのに、
観れないなんて、
考えられない。
出演するわけでもないのに、
緊張とストレスで、
手汗がにじむ。
開演予定時刻5分過ぎに、
前方に並んでいた人たちが、数人入場。
10分過ぎになって、
ようやく当日券最後の5枚が発券され、
チケット入手。
2012年にクリエーションされた作品、
『Foudres』
http://www.theatredelaville-paris.com/spectacle-Foudres-635
これこそが、
パリ、THÉÂTRE DE LA VILLEのレベル。
完成度の高さの上にしか、
君臨し得ない、
絶対的な「破壊力」
圧倒的なテクニックの上にしか、
君臨し得ない、
突き抜けた「バカバカしさ」と「下ネタ」
私が20歳のとき、
初めてフランスに行って、
一瞬で魅了されてしまった劇場、
パリ市立劇場(THÉÂTRE DE LA VILLE)
昨年、6月に、
2014年度プログラムが、
発表された。
その中で、
目にとびこんできて、
思わず、手帳にメモした、
名前もきいたことがなかった、
カナダの振付家Dave St-Pierreの言葉。
«Je déteste la mièvrerie. Je déteste la tiédeur. »
(私は、甘ったるいのが嫌い。生温さも、大嫌い。)
そして、
ビル・ワターソンの漫画「カルビンとホッブス」から
彼が引用していた言葉。
« Le bonheur ce n’est pas assez pour moi. Je demande l’euphorie. »
Bill Watterson, B.D. Calvin and Hobbes
(私には、幸福では、物足りない。私が求めるのは、「陶酔」。)
彼は、17歳のとき、
寿命は30代と言われている
嚢胞性線維症
と診断される。
そこで、
死を間近に控えた身体が産み出す、
彼の身体の物語と彼自身の歴史:ダンス。
そして、2011年には、
彼の親友であり、
創作のパートナーであるBrigitte Poupartが、
彼のアーティストとしての半生を描いたドキュメンタリーを発表。
JUTRA 2013で、
最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。
ニューヨーク、MoMAでも、
上映された。
http://www.moma.org/visit/calendar/film_screenings/14761
舞台芸術は、
この世で、
もっともハイリスクな賭け事。
生身の人間の、
生身のアート。
Dave St-Pierreのキーワード、
“Foncer” : 突き抜ける。
いつ何が起こるかわからない、
人間の儚さや繊細さを、
嫌というほど味わってきたアーティストだから、
中途半端なことはやらない。できない。
大嫌いか、
大好きか、
それ以外の感想は存在しない。
大嫌いか、
大好きか、
その感想がもらえたら本望。
終演後は、Dave St-Pierre本人が、
舞台に登場し、
スタッフ、ダンサー、ひとりひとりを紹介。
シャンパンまで出てきて、
客出ししながら、
舞台上で打ち上げ。
本当に、
最後まで、
何が起こるかわからない。
これだから、
どんな予定も振り切って、
顔も知らない1000人とのランデブーを、
優先せずにはいられない。
ちなみに、
彼の傑作と言われている、
私は、今回観れなかった作品のビデオを発見。
『UN PEU DE TENDRESSE BORDEL DE MERDE ! (2006) 』
http://www.numeridanse.tv/fr/catalog?mediaRef=MEDIA110105165830144