子どもの時、
石田衣良さんを扱ったドキュメンタリー番組で、
何もかも真っ白にしているという、仕事部屋を見て以来、
おこがましいけど、
その習慣を、
私も、極力まねさせて頂いている。
ちなみに、その時に読んでいたのは、
『うつくしい子ども』
このタイトルに出会って以来、
タイトル、もしくは、劇団名というものに、
絶大な信用を置くようになりました。
そんな、石田衣良さんの最近の作品『シューカツ!』を拝読。
タイトル通り、
大学3年生の女の子が、学内の仲間と「シューカツプロジェクトチーム」を結成し、
全員で最難関マスコミ合格を目指す話。
フランスに来てから、
2年間、受験生であり、
内容からすれば、かなり、
シューカツ生だった私には、
最も遠く離れたところにいそうで、
実は、恐ろしく身近すぎて、
まっさらな青春小説なのに身震いしながら読みました。
「この1年で、『一生の仕事』を決める」
そんなフレーズを、何度も本文の中に目にしながら、
私は、
9月から始まる新学期に向けて、
モンペリエで、
「3年分のアパートを5日で」決めようとしていました。
住んだこともない土地で、
家賃や治安、なにもかも吟味しなければいけない決断に、
かなりナーバスになる日本人な私に、
フランス人は、一言。
「気に入らなかったら、来年、引っ越しなよ。」
たしかに、フランスでは、
学生向きのワンルームアパートの場合、
家具付のものが多いので、
引っ越しは、日本に比べて断然簡単。
常に、いい物件を探している人も多々。
非正者社員の生涯賃金は1億円に対して、
大企業の正社員なら、2億から2億5千万。
ここを目指すには、新卒のゴールデンチケットを使わなければいけないので、
実質、チャンスは人生で一度きりだそうです。
日本で一番ネックになるもの、
それは、
履歴書の空白時間。
卒業から、就職の間に少しでも、
空白があれば、
きっとどんなにスペシャルなことをしていたとしても、
ゴールデンチケットを逃してしまうのだろう。
フランスに来てから、
時間の感覚がだいぶ変わった。
フランス人は、10代から20代と同じくらい、
20代から30代にかけても、
30代から40代にかけても、
イベント、つまり変化が多い。
大学を3年間で卒業する人なんて、滅多にいないし、
卒業時には、
すでに、
2年間会社で働いた経験がある人もいる。
お金は、
生きていくためではなく、
やりたいことがあるから、必要なもの。
つまり、
やりたいことがあるから働き、
もしくは、
やりたいことがあるから時間を作る。
少しでも、社会のレールから外れて生きていく場合、
自分のやっていることを正当化する哲学がないとやっていけない。
社会に言い訳しながら、
自分には決して言い訳せずに、
踏ん張ること。
自分の一生は、
一回じゃなくて、
何回だってコーディネイトするもの、
し続けるもの。
「この1年で、『一生の仕事』を決める」
決まらなかったら、人生おしまいなのか?
と言われると、
逆に、おしまいじゃないから困る。
私も、26歳という年齢制限を前に、
学校に合格しなかったら人生終わると思いながら、
生きてきましたが、
落ちても落ちても、
人生は終わらない。
だから、困る。
フランスでは、初対面で、
学校や、職業、もしくは、職場を尋ねる代わりに、
”Qu’est ce que vous faites dans la vie?”
シンプルに、
普段「何をしているか」を、尋ねる。
きっと、
恐ろしく大切なことは、
自分のやっていることを、
自分のやってきたことを、
そして、
自分のやりたいことを、
しっかりと、
自分の言葉で相手に伝えられることだと思う。
学生の時、
近所のおばちゃんに、
どうしても、
「演劇」やってます、
って言えなかったことを思い出して、
口の中が、
少しだけ苦くなる。
問題があったら、
また探せばいいか、
と気軽に構えながら、
明日は、
モンペリエにお引っ越し。