18区のコンセルバトワールで開かれている、
マリオネットの授業が一般公開されるということで、
サン・ジェルマン地区の劇場へ。
MPAA SAINT-GERMAIN
http://www.mpaa.fr/Programme?year=2011&month=12&day=03&event=Initiation-aux-arts-de-la-marionnette&e_id=2781
18区の生徒の数人とは、演出のクラスで一緒に授業を受けているので、
知っている顔もちらほら。
劇場の舞台で、授業が行われていて、
私たちは客席で見学するかたち。
フランスには、
国立のマリオネット専門の学校があって、
Ecole Supérieure des Arts de la Marionnette
http://www.marionnette.com/
先生のニコラとアレキサンドラは、
この学校の卒業生。
現在は、自分たちのカンパニーで作品を発表しつつ、
18区のコンセルバトワールで週に3時間、教えているそうです。
この授業もオプションなので、
私たちも選択することが出来るのですが、
自分たちの必修授業と時間がかぶっているため、選択不可能。
むしろ、今日まで、
マリオネットなんて、一切興味がなかったので、
私は、調べてもいなかったのですが、
今日の公開授業をみて、
一変…!!!
たった1時間の公開授業+質疑応答だったのですが、
結局、先生や18区の友達に質問したいことがありすぎて、
3時間も長居してしまいました。
まず、基本的なエクササイズから。
俳優は、床に寝て、片手にマリオネット(表情のない白っぽいニュートラルなもの)をかぶせ、
肘で固定して立たせます。
そして、ひたすらマリオネットに集中する。
マリオネットをつけずに、自分の手でやることもあるそうです。
ここで、何の感情も持たないはずのマリオネットが、
自分自身の身体から発せられる微々たる動きによって、
いろんな表情を見せてくる。
徐々に、言葉を使い、
マリオネットを通して、自分に関わる。
「起きて!朝だよー!!」
横たわっている自分の身体に、コンタクトする。
次は、立って、
2種類の対照的なエクササイズ。
1つ目は、マリオネットにイニシアティブをとらせ、
俳優が動かされる。
このとき、俳優は極力無表情。
マリオネットが、俳優の身体にふれたり、接触をこころみることによって、
俳優の身体は、完全に受け身。
むしろ、俳優がマリオネットのように見えてくる。
2つ目は、マリオネットを固定させ、
その周囲を俳優が動き、
マリオネットに関わりを持っていく。
前者とは、反対で、このときのイニシアティブは俳優。
俳優は、自分の動作に意味を持たせたり、感情を持たせたりすることが出来る。
ここで、おもしろいのが、
結局、マリオネットも、マリオネットに対している俳優も、
自分自身だということ。
自分と向き合っている、マリオネットを生かしているのも自分自身だということ。
この点が、俳優の訓練に、大きな作用をもたらすと、
先生は言っていました。
俳優は、マリオネットを介して、
自分の身体を操っている。
相手に、影響を与えるときと、
相手から、影響を受けるとき、
この二つがクリアじゃないとマリオネットは決して成立しない。
同時に、俳優は、自分とマリオネットの間に生じる、
距離を操作することによって、
空間を把握することも求められる。
最後に、この公開授業を企画したプロデューサーが、
今まで、マリオネットは、
マリオネットの作品のためだけに、
使われてきたけど、
俳優がより繊細になるための訓練として、
非常に役立つはずだ、と言っていました。
日本の人形劇の場合、
浄瑠璃にしても、ひょっこりひょうたん島にしても、
操作している俳優は、
顔や姿を隠していて、
人形と直接コンタクトするなんて、もってのほかですが、
フランスでは、
両方あるようです。
もちろん、俳優の訓練としては、
常に、自分と対峙させることが重要なので、
棒に糸をつけて操るよりも、
自分の手に直接かぶせるパペットタイプの方が、多いそうですが。
それにしても、奥が深い。
マリオネットのサイズも、重要なポイントだと思う。
ちょっとでも、指先が動いただけでも、
マリオネットの小さな身体には、大きく作用し、
そっぽを向いたようにも、
首を傾げたようにも、
うなずいたようにも見える。
ペットボトルの中の水を、4分の1くらい飲んでおくと、
水は、ずっーと形を変えてく。
この25%くらいのミステリーが、
あり得ないほど巨大なイマジネーションを孕んでいると思うと、
恥ずかしながら、
ドキドキしてしまう。