だんだん時間軸がズレていっているこのブログですが、
ゆっくり更新します。
演出クラスの今回の課題は、
インプロビゼーション。
テーマは『私たちの時代』もしくは、『私の演劇』
なんて、ダイレクトなテーマ。
発表の方法が、とてもユニークでした。
まず、生徒20人全員が、
舞台上にバラバラに置かれた椅子の好きな場所に座ります。
そこから、3時間ノンストップでそれぞれが発表。
つまり、始まりも終わりも、順番も決まっていない。
前の人の終わりをひろってもいいし、
誰も始めず沈黙もあるし、
勝手にトイレに行く人もいるし、
すべてがインプロ。
何か、自分がやることをあらかじめ説明したい人も、
この一連の大きなスペクタクルの中で、
行動する必要があります。
それに、自分がやってないときも、
発表している人と、同じ空間に存在しているので、
出演者同然。
ほとんどの生徒が、観ている他の生徒と、
なんらかの関わりをもちながら発表したので、
いつ何がおこるか、誰にもわからず、
終わったときには全員ぐったり…
私にとっては、人前でフランス語をしゃべること自体がすでにインプロなので、
ダブルインプロといった感じでした。
この発表形態を知らされる前は、
発表前に誰かひとりに、一緒にやってください、と頼もう思っていたのですが、
一番に動き出した男の子が、
発表をし終えて、
すみでこそこそとズボンを履き替えていて、
パンツになったとき、
ここだ!と思って、
後ろからそっと近づいて着替えを直視。
みんながくすくす笑ったので、その子が私に気づいて、
恥ずかしそうに、ボンジュールと言ってきました。
そこで、私の発表のはじまり。
私が選択したのは、『私の演劇』
「1番目!」と大きな声で言って、
その子と、会話を開始。
「海と山とどっちが好き?」とか、
「リンゴとレモンどっちが好き?」とか、
そんなくだらないことを満面の笑みで質問して、
だんだん仲良くなってきたところで、
「2番目!」と言って、
舞台上にいるみんなに向かって、
その子に教えながら、
日本の童謡の「チョウチョ」を一緒に歌いました。
彼が訳が分からなくて、テンパっていてすごく可愛かった。
計画通り!笑
前半で、共演者同士のコンタクト、
後半で、前半をふまえた上で成り立つ、観客とのコンタクトを、
見せたかったのですが、
舞台と客席が、完全に別れていなかったので、
ちょっとわかりにくかったかな。
授業の最後の1時間は、フィードバックとディスカッション。
毎回、盛り上がりすぎて、
時間通りに終わらないので、
次のクラスの生徒たちが来て教室を追い出され、
学校の外で続きをしたりします。
先生は今回の課題について、
演出家は、「空間」と「時間」を感じることを常に必要とされている、と言っていました。
この二つは、常に変化してしていくものなので、
準備をすることができない。
そこで、
インプロビゼーションとこの発表形態を選んだそうです。
今回は、『私たちの時代』を選択した人たちが多く、
そのテーマについての話題が主でした。
かなり社会的、政治的な内容が多かった。
例えば、フランスの娯楽的なテレビ番組を揶揄したようなものや、
政治家に向けたデモのようなもの、
格差社会を扱ったもの、などなど。
「私たちの時代」といわれたら、
家族とか、友人間とか、
もっと身近な単位での関係性に、
焦点が当てられるのでは、と予想していたので、
かなり意外でした。
日本の現代演劇界では、
社会全体というより、
個人間における小規模な関係性がテーマになっている作品が、
とても多いと思うし、
現在の私にとっては正直こちらの方が興味深い。
ドイツでは、現在でも、
政治的な内容を含まない作品を見つける方が難しいそうです。
演劇の同時代性というか、
その時代に、その作品を、上演する「意味」というものが、
否応なくつきまとってくるものだと思います。
なぜなら、作っている人たちが、その時代に生きているから。
その「意味」は次の時代には、
もうなくなっているかもしれないし、
はたまた、別のもの変わってしまうかもしれない。
それは、とても儚くて、脆いものだけど、
ことの「最中」は、
ひどく、
ビビットだ。