ベルトルト・ブレヒト『アルトゥロ・ウィの興隆』

今週の課題は、ベルトルト・ブレヒトの『アルトゥロ・ウィの興隆』という訳の分からないタイトルの戯曲。
ドイツでは、頻繁に上演されている様ですが、
日本での上演はほぼ皆無。
5年以上前に新国立でハイナー・ミュラー演出の『アルトゥロ・ウィの興隆』があった様です。
アルトゥロ・ウィとは、何を隠そうあのヒトラーのこと。
かなり、社会的・政治的な戯曲で、登場人物も多い。
ヒトラーとナチスがあらゆる手段を使い独裁者としての地位を確立していく過程を、
シカゴのギャングの世界に置き換えて描いたもので、
ヒトラー「興隆」の史劇が巧みに組み込まれています。
ドイツ語の題に「抑えることのできた興隆」とあるように、
ヒトラーのみならず、その登場を許した社会環境をも厳しく見つめた作品です。

(新国立劇場ホームページより:http://http://www.nntt.jac.go.jp/season/s267/s267.html
授業に備えて、ブレヒトについて、ちょっとお勉強してみた。
戯曲の内容は、完全には理解不能なので、
せめて、ブレヒトの演劇理論だけでも。。
「劇的演劇」
観客を役に感情移入させつつ出来事を舞台上で再現(リプレゼンテーション)することによって観客に様々な感情を呼び起こすもの
「叙事的演劇」
役者が舞台を通して出来事を説明(デモンストレーション)し、観客に批判的な思考を促して事件の本質に迫らせようとするものである。

(ウィキペディアよりhttp://ja.wikipedia.org/wiki/ベルトルト・ブレヒト
ブレヒト理論は後者。
このときに、必要とされる役者とは、
役に「なりきる」ことのない役者。
俳優は、リア王に「なって」行動するのではなく(リプレゼンテーション)、
リア王の行動に対する自分の驚きや不思議さをコメント(デモンストレーション)する。
ここで、出てくるのが有名な『異化効果』
この目的とは、観客が俳優にのめり込むのを妨げ、
批判的な目を失わないようにすること。
この『異化効果』、
なんと中国の京劇から影響を受けて確立された理論のようです!
京劇俳優は、自分が観客に観られているのを知っていることを隠そうとしない。
そういえば、歌舞伎も見栄を切ったりする訳だから、
確実に観客がいることを認識している。
役者がこのような態度をとると、
観客はその役にのめりこんだり共感したりすることはない。
アジアとヨーロッパの関係って、すごくおもしろい。
お互いに、相手の国がやっていることが「新しい」と思って、
学び、取り入れようとする。
ベレヒとが、影響を受けた哲学者にヘーゲルさんという人がいて、
その人の残した有名な言葉が、
『知られている事柄は、
 知られているがゆえに未知である。』

確かに。
『アルトゥロ・ウィの興隆』の中にも、
「劇的演劇」を小馬鹿にするような、スキャンダラスなシーンがあったので、
私は、そのシーンを選んで、
発表しました。
アルトゥロ・ウィに、俳優が、シェイクスピアに出てくる登場人物の、
台詞の言い回しや歩き方、立ち振る舞いを、
誇張しながら教えるというシーンで、
とっても、コミカルなんだけど、
アルトゥロ・ウィは、そのシーンを通してモンスター化していく。
それにしても、
みんなの発表は本当に自由。
ト書き、完全無視。
オープニングの口上のシーンを、
キャバレーに見立てて、
エロティックな衣装と音楽と一緒に口上を踊りながら演じた子や、
勝手に、アルトゥロ・ウィのモノローグシーンを作って、
一人芝居として発表した子がいたりで…
本当、もはや、やるかやらないかだけ。
負けてらんないなあ…わたし。
参考文献:岩渕達治『ブレヒト』(清水書院)1980

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